2030年秋頃の開業を目指す大阪IR(統合型リゾート)プロジェクト。当初の計画では約1兆2,700億円規模とされていた初期投資額は、資材高騰等を背景に、2025年9月に公表された変更計画では約1兆5,130億円規模に増額されています。日本初の本格的IR施設において、カジノフロアの設計はもちろんのこと、併設される飲食エリアの差別化戦略が注目を集めています。
「マカオやシンガポール、ラスベガスといった世界のIR施設と、どのように差別化すればよいのか」「長時間営業(24時間運営を採る施設も多い)のカジノ施設において、飲食エリアはどのような役割を果たすべきか」——IR施設の設計・企画に携わる方々にとって、これらは避けて通れない課題です。
実は、世界の成功しているIR施設では、飲食エリアを単なる「食事の場」ではなく、顧客体験を向上させ、滞在時間を延長し、施設全体の収益を最大化するための戦略的空間として位置づけています。照明、素材、アート、水景など、複数のアプローチを組み合わせることで、他施設との明確な差別化を実現しているのです。
本記事では、IR施設の建設会社、内装デザイン会社、設計・企画担当者の方々に向けて、世界のカジノ施設で採用されている飲食エリアの差別化手法を7つ紹介します。各手法の費用対効果やメンテナンス性も比較しながら、大阪IR施設で世界水準の飲食空間を実現するためのヒントをお伝えします。
カジノ施設における飲食エリアの戦略的重要性

IR施設の収益構造を考える上で、飲食エリアの位置づけを正しく理解することが重要です。カジノ単体での収益だけでなく、施設全体としての顧客体験価値を高めることが、現代のIRビジネスモデルの核心となっています。
飲食エリアが施設全体の収益に与える影響
世界のIR施設において、飲食部門はカジノ収益に次ぐ重要な収益源の一つとして位置づけられています。ただし、その構成比は施設の事業モデルや立地条件により大きく異なります。飲食エリアの真の価値は、直接的な売上だけでは測れません。
質の高い飲食体験を提供する施設では、顧客一人当たりの総消費額や再来訪意向が向上する傾向が指摘されています。これは、飲食エリアでの満足度が高い顧客ほど、カジノフロアでの滞在時間が長くなり、結果としてゲーミング収益にも好影響を与えるためと考えられています。
また、IR施設の飲食エリアは、カジノを利用しない顧客層——ビジネス会議の参加者、ショッピング目的の来館者、エンターテインメントイベントの観客——を施設に引き込む重要な集客装置としても機能します。統合型リゾートという名称が示す通り、多様な顧客層を取り込むことがIRビジネスの成功条件であり、飲食エリアはその中核を担う施設なのです。
顧客滞在時間と消費行動の相関関係
カジノ施設の運営において、顧客の滞在時間は収益に直結する重要指標です。マカオなどのIR市場では、空間デザインへの投資によって滞在時間や消費行動に好影響を与えることを期待し、飲食エリアの演出強化が重視されています。
この効果が生まれる要因として、以下の点が挙げられます。
まず、快適で魅力的な飲食空間は、顧客に「休憩」ではなく「体験」を提供します。単に空腹を満たすための場所ではなく、その空間にいること自体が価値となるため、顧客は自然と長く滞在するようになります。
次に、飲食エリアの空間デザインが施設全体のブランドイメージを形成し、顧客のロイヤルティ向上に寄与します。シンガポールのマリーナベイ・サンズでは、スターシェフのレストランと独自性の高い空間デザインを組み合わせることで、「食事のためだけに訪れる」リピーターを多数獲得しています。
さらに、海外の主要カジノ施設では長時間営業が一般的であり、飲食エリアは顧客の生体リズムをコントロールする役割も果たします。時間感覚を忘れさせる空間設計と、適切なタイミングでの飲食提供により、顧客の施設内回遊を促進することが可能です。
世界のIR施設に学ぶ飲食エリア差別化7つの手法

IR施設の飲食エリアを差別化するためのアプローチは多岐にわたります。ここでは、世界のカジノホテルで実際に採用されている7つの手法を、それぞれの特徴とともに解説します。
照明デザインによる空間演出
照明は飲食空間の印象を決定づける最も基本的かつ重要な要素です。IR施設の飲食エリアでは、以下のような照明手法が効果的に活用されています。
間接照明による柔らかな光の演出は、高級感と落ち着きを両立させます。天井や壁面に光源を隠し、反射光で空間を照らすことで、直接光では得られない奥行きと温かみを創出できます。ラスベガスの高級レストランでは、調光システムと組み合わせることで、時間帯や客層に応じた最適な照度を実現しています。
シャンデリアやペンダントライトといった装飾照明は、空間のフォーカルポイント(視線の集まる点)として機能します。マカオのウィン・パレスでは、エントランスに設置された巨大なクリスタルシャンデリアが、来館者に強烈な第一印象を与えています。
LED技術の進化により、色温度や色相を自在にコントロールできるようになりました。これにより、同じ空間でも昼と夜で異なる雰囲気を演出したり、イベントに合わせて空間の印象を変化させたりすることが可能です。
天井・空間設計による開放感の創出
天井高と空間設計は、顧客が感じる「格」と「居心地」を左右します。IR施設の飲食エリアでは、天井デザインに相当の投資が行われています。
折り上げ天井(コーブ天井)は、天井の一部を凹ませて間接照明を組み込む手法で、空間に奥行きと高級感を与えます。マカオのグランドリスボアでは、飲食エリアの天井に複雑な折り上げ天井を採用し、欧州の宮殿を思わせる荘厳な雰囲気を演出しています。
高天井設計は、特にメインダイニングやバンケットホールで効果を発揮します。6メートル以上の天井高を確保することで、顧客に非日常的な開放感を提供できます。ただし、天井が高すぎると空調効率が低下するため、設計段階での綿密な検討が必要です。
装飾天井には、モールディング(装飾縁)、格天井、ドーム天井などの選択肢があります。シンガポールのリゾート・ワールド・セントーサでは、アジアンテイストの格天井と現代的なデザインを融合させ、独自のアイデンティティを確立しています。
壁面装飾・素材選定による高級感の演出
壁面は飲食空間において最も視界に入りやすい要素であり、素材選定が空間全体の印象を決定します。
大理石や天然石は、クラシカルな高級感を演出する定番素材です。イタリア産のカラーラ大理石やトルコ産のオニキスなど、産地や模様によって空間の個性を表現できます。マカオの老舗カジノホテルでは、壁面一面に大理石を使用することで、圧倒的な重厚感を創出しています。
特注パネルは、施設独自のデザインを実現するための選択肢です。金属パネル、ガラスパネル、木製パネルなど、素材とデザインの組み合わせは無限大です。ラスベガスのコスモポリタンでは、現代アートをモチーフにした特注パネルを飲食エリアに採用し、若い富裕層をターゲットにした差別化を図っています。
ミラー装飾は、空間を視覚的に拡張する効果があります。特にコンパクトな個室やVIPルームでは、ミラーの戦略的な配置により、実際の面積以上の開放感を演出できます。アンティークミラーやエッチングミラーを使用することで、単なる鏡ではなく装飾としての価値も高められます。
フロア・床材デザインによるゾーニング
床材は、空間のゾーニング(区分け)と動線設計に直結する重要な要素です。IR施設の飲食エリアでは、複数の床材を組み合わせることで、視覚的な区分けと顧客誘導を同時に実現しています。
高級カーペットは、音の吸収と足元の快適性を提供します。ウィルトン織りやアキスミンスター織りといった高品質カーペットは、耐久性と意匠性を両立し、長期間にわたって美観を維持できます。カジノフロアから続く飲食エリアでは、カーペットの色や柄を変えることで、空間の切り替わりを顧客に自然に認識させることが可能です。
大理石タイルや磁器タイルは、メンテナンス性に優れ、高い耐久性を持ちます。エントランスや通路など、人の往来が激しいエリアに適しています。タイルの配置パターン(ヘリンボーン、市松模様など)によって、空間に動きや方向性を与えることもできます。
特注デザインのフロアは、施設のブランドアイデンティティを強化します。ロゴやシンボルをフロアに組み込んだり、独自のパターンを開発したりすることで、他施設にはない唯一無二の空間を創出できます。
家具・什器のセレクション
家具と什器は、顧客が直接触れる要素であり、空間デザインの完成度を左右します。IR施設の飲食エリアでは、機能性とデザイン性の両立が求められます。
テーブルと椅子の選定においては、座り心地、耐久性、メンテナンス性、そしてデザインのバランスが重要です。長時間滞在を促すためには、適切なクッション性と背もたれ角度を持つ椅子が必要です。一方で、長時間営業の施設では、汚れに強く、清掃が容易な素材を選ぶことも欠かせません。
カスタムメイドの家具は、空間の統一感を高めます。既製品では実現できない寸法やデザインを追求することで、施設全体のコンセプトに沿った一貫性のある空間を創出できます。マカオのモーフィアスでは、ザハ・ハディド建築事務所がデザインした曲線的な家具が、建築と一体化した唯一無二の空間を形成しています。
照明付き什器やディスプレイケースは、商品や料理を効果的に見せるための重要な要素です。特にバーカウンターやビュッフェ台では、什器のデザインが顧客の購買意欲に直接影響します。
アート・オブジェの配置
アートとオブジェは、飲食空間に文化的な深みとストーリー性を与えます。IR施設では、アートの戦略的な活用が差別化の重要な手段となっています。
現代アートの導入は、施設の先進性とセンスを示すシグナルとして機能します。ラスベガスのベラージオでは、デイル・チフーリによるガラス彫刻「フィオーリ・ディ・コモ」がロビー天井を飾り、施設のシンボルとなっています。このようなシグネチャーアートは、SNSでの拡散を通じて強力なマーケティング効果を発揮します。
地域の伝統工芸や文化的なモチーフを取り入れることで、その土地ならではの独自性を表現できます。大阪IRにおいては、日本の伝統工芸——漆器、陶磁器、金属工芸、テキスタイルなど——を現代的な解釈で取り入れることが、世界のIR施設との差別化ポイントとなり得ます。
インタラクティブなアート作品は、顧客参加型の体験を提供します。センサーに反応して動く彫刻や、時間とともに変化するインスタレーションは、静的な装飾では得られない驚きと楽しさを演出します。
動的な視覚演出(水・光・映像の融合)
静的な装飾に加えて、動きのある視覚演出は、IR施設の飲食エリアに特別な印象を与えます。特に近年注目されているのが、水と光を組み合わせた演出手法です。
映像技術を活用したプロジェクションマッピングは、空間を自在に変化させることができます。壁面や天井に投影される映像により、同じ空間でありながら季節やイベントに応じた全く異なる雰囲気を創出できます。ラスベガスのいくつかの施設では、食事の進行に合わせて映像が変化する「イマーシブダイニング」を提供し、話題を集めています。
水を使った演出——噴水、滝、水盤——は、視覚的なインパクトに加えて、水音による聴覚的な癒し効果をもたらします。マカオのウィン・マカオでは、エントランス前の噴水ショーが施設のシンボルとなっています。
その中でも、世界のIR施設で導入事例が増えているのが「ウォーターインテリア」と呼ばれる室内装飾です。ウォーターインテリアとは、水と光を組み合わせた空間演出装飾の総称で、代表的なものに「バブルウォール」(アクリルパネル内で気泡が上昇する装飾)や「ウォーターウォール」(壁面を水が流れ落ちる装飾)があります。
マカオやシンガポール、ラスベガスなどの一部IR施設では、エントランスホールやVIPルーム、高級レストランの間仕切りとしてウォーターインテリアを採用している事例があります。長時間営業のカジノ施設において、水の動きと光の反射が生み出す視覚効果は、顧客の視線を引きつけ、空間に生命感を与える演出として評価されています。
ラスベガス・マカオ・シンガポールの成功事例

世界三大カジノ都市における飲食エリアの差別化事例を分析することで、大阪IR施設の設計に活かせる具体的なヒントが見えてきます。
ラスベガス:エンターテインメントとの融合
ラスベガスのIR施設は、「食事そのものをエンターテインメントにする」というコンセプトで差別化を図っています。
かつてベラージオで26年間営業していた「ピカソ」は、パブロ・ピカソのオリジナル作品に囲まれながら食事ができる世界でも稀有なレストランとして知られていました。2024年8月に惜しまれつつ閉店しましたが、料理だけでなく空間全体が芸術体験となるコンセプトは、高価格帯でも予約が取れないほどの人気を博しました。このようなアートと食体験の統合は、IR施設における飲食エリア差別化の好例といえます。
ウィン・ラスベガスの高級レストランでは、ウォーターインテリアを効果的に活用し、水の流れる壁面が食事空間と通路を優雅に区切っています。この演出により、オープンフロアでありながらプライベート感のある空間を実現し、VIP顧客から高い評価を得ています。
コスモポリタンでは、若い富裕層をターゲットに、現代アートとテクノロジーを融合させた空間設計を採用。飲食エリア全体がInstagram映えする設計となっており、顧客自身がSNSで発信することでマーケティング効果を生み出しています。
マカオ:アジアンラグジュアリーの追求
マカオのIR施設は、欧州の伝統的な高級感とアジアの美意識を融合させた独自のスタイルを確立しています。
グランドリスボアでは、ポルトガル統治時代の建築様式を現代的に解釈した空間デザインを採用。飲食エリアの天井には金箔を施した装飾が施され、壁面には中国の伝統的な吉祥文様がモダンにアレンジされています。この東西融合のアプローチは、マカオならではの独自性として国際的に高く評価されています。
ウィン・パレスは、ロビーに設置されたムラーノガラスのシャンデリアをはじめとする豪華な装飾で知られています。また、施設前のパフォーマンス・レイク(噴水ショー)など、水・光・音を組み合わせた演出で来館者に強烈な印象を与えています。併設のレストランでは、この水景を眺めながら食事ができる席が人気の高いテーブルとなっています。
シティ・オブ・ドリームスでは、フランク・ゲーリー設計のモーフィアスホテル内に、有機的な曲線で構成された飲食空間を展開。建築そのものがアートとなる空間で、従来のカジノホテルとは一線を画す体験を提供しています。
シンガポール:サステナビリティとテクノロジーの融合
シンガポールのIR施設は、環境配慮と先端技術を差別化の軸としています。
マリーナベイ・サンズでは、屋上のインフィニティプールが世界的に有名ですが、飲食エリアにおいても独自の差別化戦略を展開しています。施設内では、著名シェフによる「Maison Boulud」などの高級レストランを展開し、季節感を重視したフレンチ料理を提供。質の高い食体験を求める顧客層からの支持を獲得しています。
リゾート・ワールド・セントーサの飲食エリアでは、デジタルサイネージとインタラクティブ技術を積極的に導入。テーブルに埋め込まれたタッチパネルで料理をオーダーしたり、壁面のデジタルアートが顧客の動きに反応したりする体験を提供しています。
また、同施設のVIPエリアでは、バブルウォールを間仕切りとして使用し、プライバシーを確保しながらも開放感のある空間を実現。照明の色を変えることで、顧客の好みに応じた雰囲気を演出できる仕組みが導入されています。
各手法の費用対効果・メンテナンス性比較

IR施設の飲食エリアにおける各差別化手法を、初期費用、視覚的インパクト、メンテナンス性、差別化効果、施工期間の観点から比較します。以下の表は、一般的な傾向を示したものであり、具体的な費用は規模や仕様によって大きく異なります。
| 差別化手法 | 初期費用 | 視覚インパクト | メンテナンス性 | 差別化効果 | 施工期間 |
|---|---|---|---|---|---|
| 照明デザイン(間接照明・LED演出) | 中 | 中〜高 | 高(LED長寿命) | 中 | 短〜中 |
| 天井装飾(折り上げ天井・装飾天井) | 中〜高 | 中 | 高(静的装飾) | 中 | 中〜長 |
| 壁面装飾(大理石・特注パネル) | 高 | 中〜高 | 高(耐久性良好) | 中 | 中〜長 |
| フロア素材(高級カーペット・大理石タイル) | 中〜高 | 中 | 中(定期清掃必要) | 中 | 中 |
| 家具・什器(カスタムメイド) | 中〜高 | 中 | 中(経年劣化あり) | 中 | 中 |
| アート・オブジェ | 中〜高 | 高 | 高(静的展示) | 高 | 短 |
| ウォーターインテリア | 中〜高 | 高 | 中(定期メンテナンス必要) | 高 | 中 |
| プロジェクションマッピング | 中 | 高 | 中(機器更新必要) | 高 | 短 |
投資対効果の考え方
IR施設の飲食エリアへの投資を評価する際、初期費用だけでなく、以下の観点から総合的に判断することが重要です。
顧客滞在時間への影響は、投資効果を測る最も直接的な指標です。空間デザインへの投資によって滞在時間が延び、飲食・エンターテインメント消費の増加につながる可能性が指摘されています。ただし、ROI(投資対効果)は立地・客単価・席数・回転率・営業形態などにより大きく変動するため、個別プロジェクトごとの詳細な試算が必要です。
SNSでの拡散効果も考慮すべき要素です。視覚的インパクトの高い装飾——特にウォーターインテリアやシグネチャーアート——は、顧客による自発的な情報発信を促し、広告費に換算すると無視できない規模のマーケティング効果につながるケースもあります。
ライフサイクルコスト(初期費用+メンテナンス費用+更新費用)の観点では、初期費用が高くても長期的なメンテナンス費用が低い選択肢が有利になる場合があります。例えば、大理石壁面は初期費用は高いものの、適切な施工であれば20年以上美観を維持できます。一方、プロジェクションマッピングは初期費用は抑えられますが、機器の更新やコンテンツ制作に継続的な投資が必要です。
ウォーターインテリアについては、定期的な水質管理とメンテナンスが必要となりますが、大規模施設への導入実績を持つ専門業者と連携することで、長期的な品質維持が可能です。大規模施設への導入には設計段階からの検討が重要であり、施工後のメンテナンス体制も含めた総合的なサポートが受けられる正規代理店への相談をおすすめします。
バブルウォールやウォーターウォールの導入を検討される場合は、米国ミッドウエストトロピカル社の日本正規代理店であるジーエムビー株式会社に相談することで、大型施設やテーマパークなどへの納入実績に基づいた提案を受けることができます。
大阪IR施設で世界水準の飲食エリアを実現するために

2030年秋頃の開業を目指す大阪IR施設において、飲食エリアの差別化戦略をどのように構築すべきか。世界のIR施設の事例から学びつつ、日本独自の強みを活かすアプローチを考察します。
日本ならではの差別化ポイント
大阪IR施設が世界のIR施設と差別化を図る上で、日本の文化的資産は大きなアドバンテージとなります。
和の伝統工芸を現代的に解釈した空間デザインは、海外からの訪問客に強いインパクトを与えます。京都の西陣織、金沢の金箔工芸、大阪の堺打刃物など、関西圏には世界に誇る伝統工芸が集積しています。これらを飲食空間のアートやディテールに取り入れることで、「ここでしか体験できない」価値を創出できます。
日本食のプレゼンテーション文化——器の選定、盛り付けの美学、季節感の表現——は、それ自体が空間演出の一部となります。飲食エリアの設計において、料理のプレゼンテーションを最大限に引き立てる照明設計や背景設計を統合的に考えることが重要です。
おもてなしの精神を空間設計に反映させることも差別化の軸となります。顧客の動線を予測した導線設計、プライバシーへの配慮、細部まで行き届いた清潔感など、日本のサービス文化を空間として具現化することで、ハード面でもソフト面でも差別化を実現できます。
設計段階から考慮すべき要素
IR施設の飲食エリア設計においては、建設初期段階からの統合的な計画が不可欠です。
空間演出設備のインフラ設計は、建築設計と並行して進める必要があります。ウォーターインテリアの導入を検討する場合、給排水設備、電気設備、構造的な荷重計算など、後から追加することが困難な要素が多数あります。設計段階から専門家を交えた検討を行うことで、最適なソリューションを実現できます。
長時間営業・深夜帯を含む運営を前提としたメンテナンス計画も重要です。海外の主要カジノ施設では長時間営業が一般的であり、大阪IRにおいても長時間運営や深夜帯の利用を前提とした設備計画が求められる可能性があります。営業を止めることが難しい施設では、メンテナンス作業の効率性と施設運営への影響を最小化する設計が求められます。バックヤードからのアクセス動線、設備の冗長化、部品交換の容易性など、運用フェーズを見据えた設計判断が必要です。
なお、カジノ区域に近接する飲食エリアの計画にあたっては、IR整備法およびカジノ管理委員会規則に基づく監視カメラ配置や入退場管理、マネーロンダリング対策などとの整合性が不可欠です。動線・視線計画を検討する際は、法令・ガイドラインを踏まえ、事業者・監理者と協議しながら設計を進めることが求められます。
段階的な更新・リニューアルを見据えた設計も考慮すべきです。10年、20年という長期スパンで施設を運営する中で、トレンドの変化や設備の経年劣化に対応する必要があります。可変性の高い空間設計と、更新が容易な設備選定により、将来の対応力を高めることができます。
専門家との連携の重要性
IR施設の飲食エリア設計は、建築、内装、照明、音響、設備、アートなど、多領域の専門知識が必要となる複合的なプロジェクトです。特に、水を使った演出設備の導入には、専門的な知見と経験が不可欠です。
ウォーターインテリアの分野では、大規模施設への豊富な納入実績を持つ専門企業との連携が、成功の鍵を握ります。設計段階から運用・メンテナンスまでを一貫してサポートできるパートナーを選定することで、長期的な品質維持と運営効率の向上を実現できます。
大阪IR施設の飲食エリア設計に携わる建設会社、設計事務所、内装デザイン会社の方々には、プロジェクトの初期段階から各専門分野のエキスパートと連携し、世界水準の空間を実現していただきたいと考えます。
まとめ

カジノ施設における飲食エリアの差別化は、IR事業の収益性と競争力を左右する重要な戦略テーマです。本記事で紹介した7つの手法——照明デザイン、天井・空間設計、壁面装飾、フロア・床材、家具・什器、アート・オブジェ、そして動的な視覚演出——は、それぞれ単独でも効果を発揮しますが、統合的に組み合わせることで、より強力な差別化を実現できます。
世界のIR施設の成功事例から学べることは、飲食エリアを単なる付帯施設ではなく、顧客体験の核心として位置づけることの重要性です。ラスベガスのエンターテインメント性、マカオの東西融合、シンガポールの先進性と環境配慮——それぞれの施設が明確なコンセプトのもとに差別化戦略を展開しています。
2030年秋頃の開業を目指す大阪IR施設においては、日本の伝統文化とおもてなしの精神を活かしながら、世界水準の空間演出を実現することが求められます。設計段階から各専門分野のエキスパートと連携し、長期的な運営を見据えた統合的な計画を立てることが、成功への第一歩となります。また、カジノ区域に関連する法規制との整合性についても、早期から検討を進めることが重要です。
飲食エリアへの空間演出投資は、顧客滞在時間の延長、SNSを通じた情報拡散、リピーター獲得など、多面的な効果をもたらします。特にウォーターインテリアをはじめとする動的な視覚演出は、視覚的インパクトと差別化効果の両面で評価されており、世界のIR施設での導入事例が増えています。
大阪IRの飲食エリア設計でお悩みの方、ウォーターインテリアの導入を検討されている方は、大規模施設への納入実績を持つジーエムビー株式会社へお気軽にご相談ください。設計段階からの相談を通じて、最適なソリューションの提案を受けることができます。


