カジノVIPルームの内装デザイン完全ガイド|世界のIR施設に学ぶ空間設計の極意

カジノVIPルームの高級内装デザインとバブルウォールのある空間

2030年秋頃の大阪IR(夢洲)開業に向けて、国内の建設・設計業界では統合型リゾート施設の空間設計に関する知見が急速に求められています。特にカジノVIPルームは、ハイローラー(高額賭け客)の獲得と長期的なリピート率向上を左右する最重要空間です。

マカオやシンガポール、ラスベガスといった世界のIR先進地域と差別化しながら、日本らしさも表現したい。しかし、国内にはカジノ設計の前例がほとんどなく、どのような内装デザインが効果的なのか判断基準がない——。このような課題を抱える設計担当者は少なくないでしょう。

そこで本記事では、世界のIR施設で採用されているVIPルームの内装デザイン手法を体系的に解説します。照明、素材、家具、アート、そして近年注目を集める動的演出まで、複数のアプローチを比較検討できる情報を提供します。大阪IRをはじめとする国内IR施設の設計に携わる方々の参考になれば幸いです。

カジノVIPルームに求められる5つの設計要件

カジノVIPルームに使用される高級素材(大理石・本革・金属装飾)のディテール

カジノVIPルームの内装デザインを検討する前に、この空間が満たすべき基本要件を整理しておきましょう。世界のIR施設で成功しているVIPルームには、共通する設計思想があります。

絶対的なプライバシーの確保

VIPルームを利用するハイローラーにとって、プライバシーは最優先事項です。一般フロアから完全に独立した動線設計、防音性能の高い壁面構造、そして視線を遮る空間レイアウトが求められます。海外のIR施設では、VIP動線を一般動線から分離し、専用エレベーターや通路、待機スペースを確保する設計が広く採用されています。

内装デザインにおいては、入口からゲーミングエリアまでの視線の遮り方が重要です。直線的なアプローチではなく、意図的に曲線や仕切りを配置することで、外部からの視認性を下げながら空間に奥行きと期待感を持たせる手法が一般的です。

非日常感を演出するラグジュアリー空間

VIPルームは、日常から完全に切り離された特別な体験を提供する場です。内装デザインには、訪れた瞬間に「特別な場所に来た」と感じさせる演出力が求められます。

この非日常感の創出には、素材の選定が大きく影響します。大理石、天然木、本革、金属装飾など、触れた瞬間に品質の高さが伝わる素材を適切に配置することで、空間全体の格を高めることができます。シンガポールのマリーナベイサンズでは、イタリア産大理石とアジアンウォールナットを組み合わせた壁面デザインが、東西文化の融合を表現しています。

長時間滞在を促す快適性

カジノ運営において、VIP顧客の滞在時間延長は収益に直結します。そのため、VIPルームの内装デザインには、長時間滞在しても疲労を感じさせない快適性が不可欠です。

具体的には、適切な照度設計による目の疲労軽減、人間工学に基づいた家具選定、温湿度を最適に保つ空調設計、そして視覚的な変化による飽きの防止などが挙げられます。近年のVIP空間では、自然光に近い色温度変化や概日リズムを意識した照明制御を取り入れる事例も増えており、長時間滞在時の快適性向上に寄与しています。

セキュリティと開放感の両立

高額のチップや現金が行き交うVIPルームでは、厳重なセキュリティが求められる一方、監視されている印象を与えては顧客満足度が低下します。この相反する要件を満たす内装デザインが必要です。

監視カメラの設置位置を意識した天井デザイン、セキュリティスタッフの待機スペースを自然に組み込むレイアウト、緊急時の避難経路を確保しながら閉塞感を与えない空間構成など、設計段階から綿密な検討が求められます。

ブランドアイデンティティの体現

VIPルームは、そのカジノ・IR施設のブランド価値を最も強く表現すべき空間です。施設全体のコンセプトと一貫性を保ちながら、VIPルームならではの特別感を付加する内装デザインが理想です。

大阪IRのような日本のIRにおいては、日本らしさと国際的なラグジュアリー感の融合を一つの有力な設計方針として検討し得ます。伝統工芸の技法を現代的に解釈した装飾、日本の四季を表現する色彩計画、和のミニマリズムと西洋の重厚感を調和させた空間構成など、独自のブランドストーリーを内装デザインで語ることが差別化につながると多くの専門家が指摘しています。

VIPルーム内装デザインの7つの手法

カジノVIPルームのシャンデリアと間接照明による空間演出

カジノVIPルームの内装デザインには、様々なアプローチがあります。ここでは、世界のIR施設で採用されている代表的な手法を7つ紹介します。それぞれの特徴、メリット・デメリット、適した施設タイプを解説しますので、設計の方向性を検討する際の参考にしてください。

照明デザインによる空間演出

照明は、VIPルームの雰囲気を決定づける最も重要な要素の一つです。適切な照明設計により、空間の印象を劇的に変えることができます。

間接照明を基調としたアンビエント照明は、柔らかく落ち着いた雰囲気を創出します。天井の折り上げ部分や壁面のコーニス照明により、空間に奥行きと高級感を与えることができます。一方、ゲーミングテーブル上には適切な照度を確保するタスク照明を配置し、カードや チップの視認性を確保します。

シャンデリアやペンダントライトなどの装飾照明は、視覚的なフォーカルポイントとなり、空間にドラマティックな印象を加えます。クリスタル製の大型シャンデリアは定番ですが、近年では現代アーティストとのコラボレーションによるオリジナル照明器具を採用する施設も増えています。

LED技術の進化により、色温度や光量を時間帯や用途に応じて変化させるダイナミック照明も普及しています。これにより、昼夜を問わず最適な雰囲気を維持しながら、特別なイベント時には異なる演出も可能になります。

照明デザインは比較的コストパフォーマンスが高く、既存空間のリノベーションにも適用しやすい手法です。ただし、効果的な照明計画には専門的な知識が必要であり、設計段階から照明デザイナーの参画が推奨されます。

壁面装飾と素材選定

壁面は、VIPルームの内装デザインにおいて最も面積の大きい要素です。壁面の素材選定と装飾手法により、空間全体の格調が決まります。

大理石は、カジノVIPルームで最も多く採用される壁面素材です。イタリア産カラーラ大理石やスペイン産クレマ・マーフィルなど、産地や模様により多様な表情を持ちます。床から天井まで一枚の大理石で仕上げるブックマッチ工法は、圧倒的な存在感を生み出します。

特注パネルも人気の選択肢です。レザー張りパネル、金属装飾パネル、布張りパネルなど、素材の組み合わせにより無限のバリエーションが可能です。音響性能を考慮した吸音パネルを採用すれば、防音性能の向上にも寄与します。

鏡面装飾は、空間を広く見せる効果があります。ただし、セキュリティ上の理由からカジノでは使用箇所に制限がある場合が多いため、設計段階での確認が必要です。

近年では、和紙や漆、組子細工など日本の伝統素材を現代的にアレンジした壁面装飾も注目されています。大阪IRにおいては、このような日本独自の意匠が差別化要因となる可能性があります。

天井デザインの重要性

天井は見落とされがちですが、VIPルームの印象を大きく左右する要素です。高い天井は開放感と格調を、意匠を凝らした天井は空間の記憶に残る個性を与えます。

折り上げ天井は、中央部を一段高くすることで空間に奥行きと高級感を加えます。段差部分に間接照明を仕込むことで、柔らかな光の演出も可能です。

装飾モールディングは、クラシカルな雰囲気を演出します。石膏やポリウレタン製のモールディングを組み合わせ、格天井や幾何学模様を構成する手法は、ヨーロッパのカジノで多く見られます。

金属製の格子天井やルーバー天井は、モダンな印象を与えます。照明や空調設備を天井裏に隠しながら、デザイン性を確保できる実用的な選択肢でもあります。

天井高が十分に確保できない場合は、鏡面仕上げや光沢のある素材を用いることで、視覚的な高さを演出することができます。

床材と動線設計

床材は、VIPルームの品格を足元から支える重要な要素です。同時に、顧客とスタッフの動線を誘導する機能も担います。

高級カーペットは、カジノフロアで最も一般的な床材です。厚みのあるウール製カーペットは、歩行時の静音性と足への負担軽減に優れています。オリジナルデザインのカーペットを製作することで、ブランドアイデンティティを床面にも展開できます。

大理石やタイルは、高級感と清掃性を両立させます。ただし、歩行音が響きやすいため、使用箇所を限定するか、下地に吸音材を敷設する配慮が必要です。

床材のパターンや色調の変化により、自然な動線誘導が可能です。ゲーミングエリア、ラウンジエリア、バーエリアなど、機能ごとに床材を使い分けることで、空間の区分けを明確にしながら回遊性を高めることができます。

家具・什器のセレクション

VIPルームの家具・什器は、空間の快適性とブランドイメージに直結します。ゲーミングテーブルやチェアはもちろん、ラウンジソファ、バーカウンター、サイドテーブルに至るまで、統一されたデザインコンセプトでセレクションすることが重要です。

ゲーミングチェアは、長時間の使用に耐える快適性と、VIPルームにふさわしい高級感を両立させる必要があります。イタリアやドイツの高級家具メーカーによるオーダーメイド製品を採用する施設が多く、本革張りのアームチェアが定番となっています。

ラウンジエリアには、ゲーム中の休憩や待ち時間を快適に過ごせる家具配置が求められます。コンテンポラリーデザインのソファセットや、クラシカルなウイングチェアなど、施設のコンセプトに合わせた選定が重要です。

バーカウンターは、VIPルームの社交場としての機能を担います。天板の素材(大理石、天然木、金属など)、背面の酒棚デザイン、スツールの快適性など、細部まで配慮が必要です。

アート・オブジェによる格の演出

アートや彫刻の配置は、VIPルームに知性と文化的な深みを加えます。単なる装飾を超え、施設のブランドストーリーを語る重要な要素となります。

現代アートの原画や彫刻作品は、空間に独自性と話題性を与えます。著名アーティストの作品は資産価値も持ち、施設の格を示す象徴となります。マカオのウィンパレスでは、ジェフ・クーンズやダミアン・ハーストの作品が展示され、アートギャラリーとしての側面も持っています。

日本のIR施設においては、国内アーティストの作品や伝統工芸品を取り入れることで、日本らしさを表現できます。輪島塗の屏風、有田焼の大壺、金沢箔を用いた現代アートなど、地域性と芸術性を兼ね備えた作品は、海外VIP顧客にも強い印象を残すでしょう。

アートの選定・配置には、専門のアートコンサルタントやキュレーターの起用が効果的です。作品の保護や照明演出も含めた総合的な提案を受けることで、最大限の効果を引き出せます。

動的な視覚演出(水・光・映像)

近年、世界のIR施設で注目を集めているのが、動的な視覚演出です。静的な装飾だけでは得られない、変化と驚きを空間にもたらします。

映像装置(デジタルサイネージ、プロジェクションマッピング)は、空間の雰囲気を柔軟に変化させることができます。季節やイベントに応じたコンテンツ変更が可能で、常に新鮮な印象を維持できます。ただし、ゲームへの集中を妨げない配置と輝度設計が重要です。

光の演出では、LED技術の進化により、かつてないほど多彩な表現が可能になっています。壁面や天井に組み込んだLEDにより、時間帯や雰囲気に応じて空間の色調を変化させる施設も増えています。

水を用いた演出も、IR施設で広く採用されています。噴水やウォーターカーテンは屋外やエントランスで一般的ですが、VIPルームの内装に水の要素を取り入れる手法も注目されています。

その中でも世界のIR施設で採用が増えているのが「ウォーターインテリア」と呼ばれる装飾です。これは、水と光を組み合わせた空間演出装飾の総称で、代表的なものに「バブルウォール」(アクリルパネル内で気泡が上昇する装飾)や「ウォーターウォール」(壁面を水が流れ落ちる装飾)があります。

マカオ、シンガポール、ラスベガスなどのIR施設でも、水と光を組み合わせた演出は一般的な要素となっており、バブルウォールやウォーターウォールと同様のコンセプトを持つ設備が導入されています。24時間営業のカジノフロアにおいて視線を引きつける演出として活用されており、顧客体験の質向上や空間の印象付けに寄与する要素として評価されるケースが報告されています。水の動きと光の反射が生み出す幻想的な雰囲気は、VIPルームの非日常感を高める効果があります。

通常の噴水に比べて水音が抑えられているため、VIPルームの静謐な雰囲気を損ないにくい構造になっています。また、密閉構造により水はねを抑えられる設計も可能ですが、湿度への影響は仕様や環境条件により異なるため、計画段階での確認が必要です。

ウォーターインテリアについて詳しく知りたい方は、以下のページで製品ラインナップや導入事例をご確認いただけます。

各手法の費用対効果・メンテナンス性比較

カジノ内装デザインの設計図面と素材サンプルによる費用検討の様子

VIPルームの内装デザインを検討する際、初期費用だけでなく、長期的なメンテナンスコストやリニューアル頻度も考慮する必要があります。以下に、主要な内装手法の比較表を示します。

装飾手法初期費用視覚インパクトメンテナンス性差別化効果リニューアル頻度
照明デザイン中〜高良好5〜10年
大理石壁面良好15〜20年
特注パネル中〜高良好中〜高10〜15年
装飾天井中〜高良好15〜20年
高級カーペット要定期交換5〜7年
アート・彫刻高(変動大)専門管理要半永久
映像装置中〜高機器更新要中〜高5〜7年
ウォーターインテリア中〜高定期メンテ要製品による※

※ウォーターインテリアのリニューアル頻度について:アクリル本体は15〜20年以上、ポンプ等の機械部品は7〜10年程度で交換が推奨されます(メーカー情報による目安)。

上記の表は、国内外の大規模商業施設・ホテル・IR関連プロジェクトで一般的に見られる傾向をもとにした目安です。初期費用については、施設の規模や仕様により大きく変動するため、具体的な数値は個別案件の仕様・物価動向・為替レートによって大きく異なります。各専門業者への見積もり依頼が必要です。

メンテナンス性については、24時間365日営業のカジノ施設では特に重要な検討項目です。清掃や補修のしやすさ、部品交換の容易さ、専門技術者の必要性などを総合的に評価する必要があります。

差別化効果については、「他のIR施設との違いを印象づけられるか」という観点での評価です。照明や素材による演出は定番手法のため差別化が難しい一方、アート作品やウォーターインテリアなど独自性の高い要素は、施設のアイデンティティを強く打ち出せます。

世界のカジノVIPルーム 設計事例分析

マカオ風の統合型リゾート施設外観と水景演出

実際の設計検討においては、世界のIR施設の事例から学ぶことが効果的です。ここでは、特徴的なVIPルーム設計を行っている施設を分析します。

マカオ:アジア最大のカジノ市場

マカオは、世界最大のカジノ収益を誇る市場であり、VIPルームの設計においても最先端の事例が集まっています。

グランドリスボアは、アジアンラグジュアリーの象徴とも言える施設です。VIPルームには、翡翠や象牙をモチーフとした装飾、中国伝統の吉祥文様を取り入れたカーペットデザイン、そして圧倒的なスケールのシャンデリアが配されています。アジアのVIP顧客が好む「華やかさ」と「縁起の良さ」を空間で表現した好例です。

ウィンパレスは、アートと水の演出で知られています。エントランスの「パフォーマンスレイク」は巨大な噴水ショーで有名ですが、VIPフロアにも屋内のウォーターフィーチャーや静かな水景演出が配置されています。ダイナミックな噴水とは異なる落ち着いた高級感を創出しており、バブルウォールやウォーターウォールなど類似コンセプトの演出も、世界各地のカジノ・リゾートで導入が進んでいます。

MGMコタイは、モダンアートとコンテンポラリーデザインを融合させた空間設計が特徴です。VIPルームには、直線的なデザインと暖色系の照明が採用され、従来のカジノとは一線を画すミニマルな高級感を実現しています。

シンガポール:都市型IRの完成形

シンガポールのIR施設は、カジノを含む総合エンターテインメント施設として設計されており、VIPルームもその文脈で理解する必要があります。

マリーナベイサンズは、建築家モシェ・サフディ(Safdie Architects)による象徴的な建築で知られています。VIPルームの内装は、建築全体のモダンなデザイン言語を継承しつつ、アジア各国のVIP顧客に対応するため、複数のテーマルームを用意しているとされています。ターゲット市場別に意匠テーマを分ける設計思想は、大阪IR設計の参考になる事例といえるでしょう。

リゾート・ワールド・セントーサは、ファミリー向けエンターテインメントとカジノを融合させた施設です。VIPルームは、一般エリアとは完全に分離され、より伝統的なラグジュアリーカジノの雰囲気を保っています。赤と金を基調とした色彩計画、クリスタルのシャンデリア、大理石の床面など、クラシカルなカジノ空間を踏襲しています。

ラスベガス:エンターテインメントの本場

ラスベガスは、カジノエンターテインメントの発祥地として、常に新しい空間体験を提案し続けています。

ベラージオは、イタリアのコモ湖畔をモチーフとした優雅な空間設計で知られています。VIPルームには、本物のアンティーク家具や美術品が配され、ヨーロピアンラグジュアリーの極致を体現しています。特に天井のガラス彫刻「Fiori di Como」(デイル・チフーリ作)は、空間全体のトーンを決定づける象徴的な存在です。

ウィンラスベガスは、創業者スティーブ・ウィンの美意識が随所に反映された施設です。VIPルームでは、自然光を取り入れた空間設計と、屋内庭園・水景による癒しの演出が特徴です。ウォーターウォールやバブルパネルも効果的に配置され、動きのある視覚体験を提供しています。

アリアリゾート&カジノは、環境配慮と先進テクノロジーを融合させた次世代型IRです。VIPルームには、客室同様のスマートコントロールシステムが導入され、照明・空調・カーテンなどを個人の好みに合わせて自動調整できます。テクノロジーによる快適性向上は、今後のVIPルーム設計における重要なトレンドです。

大阪IRにおけるVIPルーム設計の方向性

大阪IR向け和モダンVIPルームとウォーターウォールの設計イメージ

大阪・夢洲のIR事業は、MGM大阪株式会社(MGMリゾーツ・インターナショナルおよびオリックスなどによる共同出資会社、旧・大阪IR株式会社)が実施主体となり、2023年4月に国土交通大臣より区域整備計画の認定を受けました。現在は2025年着工・2030年秋頃の開業を目指して計画が進行しており、VIPルームを含む各種施設の設計検討が本格化するフェーズに入っています。

日本初の本格的統合型リゾート施設として世界の注目を集める大阪IRでは、VIPルームの内装デザインにおいても独自の価値提案が求められます。

日本らしさと国際水準の両立

大阪IRのVIPルームには、日本を訪れる海外VIP顧客に「日本でしか体験できない空間」を提供することが期待されます。一方で、カジノとしての機能性や、ハイローラーが求める快適性は、国際水準を満たす必要があります。

この両立を実現するアプローチとしては、以下のような方向性が考えられます。

伝統工芸の現代的解釈として、輪島塗、金沢箔、西陣織、有田焼などの伝統技術を、現代的なデザイン文脈で再構成する手法があります。パーティション、照明器具、壁面パネル、テーブルトップなど、様々な要素に伝統工芸を取り入れることで、日本独自の美意識を表現できます。

自然素材の積極活用も効果的です。日本建築に特徴的な木、紙、石、水の使い方は、海外のラグジュアリー空間とは異なる静謐な美しさを持ちます。特に「水」の演出は、禅寺の庭園に見られる「水琴窟」や「蹲」のような繊細な表現から、現代的なウォーターインテリアまで、幅広いアプローチが可能です。

差別化のための重点投資領域

限られた予算の中で最大の効果を得るためには、差別化効果の高い領域に重点投資することが戦略的です。

前述の比較表を踏まえると、アート・彫刻とウォーターインテリアは、差別化効果が高く、かつ長期間にわたって価値を維持できる投資対象といえます。

日本人アーティストや伝統工芸作家によるオリジナル作品は、他のIR施設では入手できない唯一無二の価値を持ちます。作品の選定・委託から展示計画まで、開業の数年前から準備を進める必要があります。

ウォーターインテリアについては、海外の大規模カジノ・リゾート施設への導入実績や、日本国内の大型商業施設・テーマパーク等での豊富な導入実績を持つ専門企業への相談が推奨されます。設計段階から施工、メンテナンスまで一貫した対応が可能な企業を選定することで、品質とコストの最適化が図れます。

大規模施設へのウォーターインテリア導入を検討される場合は、設計の初期段階から専門家に相談されることをお勧めします。給排水設備や電気工事との調整、構造的な検討など、早期に検討すべき事項が多いためです。

運用を見据えた設計配慮

VIPルームは、開業後も継続的な運用とメンテナンスが必要です。設計段階から運用フェーズを見据えた配慮が、長期的なコスト最適化につながります。

清掃・メンテナンスの効率化として、24時間営業のカジノでは、営業を止めずに清掃・補修を行える設計が重要です。汚れの目立ちにくい素材・色調の選定、交換が容易な部材の採用、清掃動線の確保などを設計に織り込む必要があります。

設備更新への対応として、照明器具や映像機器は技術進化により定期的な更新が必要になります。更新工事を最小限の影響で実施できるよう、天井裏や壁裏へのアクセス性を確保しておくことが重要です。

フレキシビリティの確保として、VIP顧客の嗜好や市場トレンドは時代とともに変化します。壁面や床面の一部を比較的容易に変更できる構造にしておくことで、大規模改装なしにイメージの刷新が可能になります。

VIPルーム設計プロジェクトの進め方

カジノVIPルーム設計プロジェクトの日本人設計チーム打合せ風景

カジノVIPルームの内装デザインは、通常の商業施設とは異なる専門性が求められます。プロジェクトを成功に導くための進め方を解説します。

設計チームの構成

VIPルームの設計には、複数の専門領域の協働が不可欠です。

インテリアデザイナーが全体のデザインコンセプトと空間計画を担当します。カジノ・ホスピタリティ分野での経験を持つデザイナーの起用が望ましいでしょう。

照明デザイナーは、空間の雰囲気を左右する照明計画を専門的に担当します。ゲーミング施設特有の要件(カード・チップの視認性、監視カメラへの配慮など)を理解していることが重要です。

アートコンサルタントは、アート作品の選定・調達・展示計画を担当します。特に高額作品を扱う場合、作品の真贋鑑定、保険、輸送、保管など、専門的な知識とネットワークが必要です。

特殊装飾の専門企業として、ウォーターインテリアや特注家具など、特殊な要素については、設計段階から専門企業との連携が効果的です。施工性やメンテナンス性を考慮した設計提案を受けることができます。

スケジュールの目安

大規模IR施設のVIPルーム設計は、一般的に以下のようなスケジュールで進行します。

基本設計に6〜12ヶ月程度を要します。コンセプト策定、空間計画、主要素材・装飾の方向性決定を行います。

実施設計に6〜12ヶ月程度を要します。詳細図面の作成、特注品の仕様決定、見積もり・発注を行います。

施工に12〜24ヶ月程度を要します。内装工事、設備工事、特殊装飾の設置を行います。

調整・引き渡しに3〜6ヶ月程度を要します。照明調整、家具・アート搬入、最終仕上げを行います。

大阪IRの2030年秋頃開業を目指す場合、VIPルームの設計着手は2026〜2027年頃が目安となります。特にオーダーメイドの家具やアート作品、特殊装飾は、リードタイムが長いため、早期の検討開始が重要です。

参考情報の収集

設計の方向性を検討する際には、実際のIR施設の視察が最も効果的です。マカオ、シンガポール、ラスベガスなど、世界の主要IR施設を訪問し、VIPルームの空間体験を直接感じることをお勧めします(VIPルームへのアクセスには、カジノ側への事前交渉が必要な場合があります)。

また、IR・カジノ分野の国際展示会(G2E Asia、ICE Londonなど)では、内装デザインや特殊装飾に関する最新トレンドや製品情報を効率的に収集できます。

ウォーターインテリアなど、特定の装飾手法について詳しく知りたい場合は、専門企業への資料請求や相談も有効です。海外での導入事例や、日本市場向けの提案を聞くことで、設計の具体的なイメージが得られます。

まとめ:大阪IRで世界水準のVIPルームを実現するために

完成したカジノVIPルームに訪れるゲストと高級空間の全景

カジノVIPルームの内装デザインは、ハイローラーの獲得と長期的なロイヤリティ構築を左右する重要な投資です。照明、壁面装飾、天井デザイン、床材、家具、アート、そしてウォーターインテリアをはじめとする動的演出まで、複数の手法を組み合わせることで、独自の空間体験を創出できます。

大阪IRにおいては、マカオやシンガポールなど既存のIR施設との差別化が成功の鍵となります。日本の伝統美と現代的ラグジュアリーの融合、テクノロジーを活用した快適性の向上、そしてアートやウォーターインテリアによる唯一無二の空間演出が、その差別化を実現する手段となるでしょう。

設計の初期段階から、各分野の専門家と連携することが、高品質な空間を効率的に実現するポイントです。特にウォーターインテリアのような特殊装飾は、給排水設備や構造との調整が必要なため、基本設計の段階から専門企業への相談をお勧めします。

IR施設へのウォーターインテリア導入について、海外カジノでの実績や製品仕様を詳しく知りたい方は、以下のページをご参照ください。米国ミッドウエストトロピカル社の正規代理店として、設計段階からの相談に対応しています。

なお、カジノ施設の設計・運営にあたっては、IR整備法や関連政省令、カジノ管理委員会が定める規則、建築基準法・消防法などの法令を遵守することが大前提となります。本記事は、内装デザインの一般的な考え方・事例の紹介を目的としたものであり、法的助言を行うものではありません。

世界に誇れる日本初のIR施設の実現に向けて、本記事が設計検討の一助となれば幸いです。

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